ラクナ梗塞は、脳の深部にある細い血管(穿通枝)が閉塞することで起こる、比較的小さな脳梗塞です。直径1.5cm以下の大きさで、基底核、視床、脳幹などに発生することが特徴的です12。この記事では、ラクナ梗塞の定義、原因、症状、診断方法、治療法、そして予防法について詳しく解説します。
Contents
ラクナ梗塞の定義と特徴
ラクナ梗塞は、脳の深部を栄養する直径0.04~0.5mmほどの細い血管である穿通枝が塞がることで発生します1。この血管の閉塞により、脳組織に酸素や栄養が行き渡らなくなり、その結果として脳細胞が壊死し、小さな梗塞巣が形成されます。
ラクナ梗塞の主な特徴:
- 脳の深部に発生する
- 比較的小さな範囲(1.5cm以下)の梗塞
- 穿通枝の閉塞が原因
- 高血圧との関連が強い
ラクナ梗塞の主な原因
ラクナ梗塞の最も重要な原因は、持続する高血圧です7。高血圧が長期間続くことで、以下のような問題が生じ、ラクナ梗塞のリスクが高まります:
- 動脈硬化の進行
- 血管壁の肥厚
- 血管の狭窄や閉塞
その他のリスク因子には、以下のようなものがあります:
- 糖尿病
- 高脂血症
- 喫煙
- 加齢
- 不規則な生活習慣
ラクナ梗塞の主な症状
ラクナ梗塞の症状は、梗塞を起こした場所によって異なりますが、一般的に以下のような症状が見られます35:
- 運動障害:
- 体の片側(右半身または左半身)の麻痺
- 顔面を含む半身の運動麻痺
- 感覚障害:
- しびれ感
- 感覚の鈍化や過敏
- 言語障害:
- 構音障害(呂律が回らない)
- 話しにくさ
- 協調運動障害:
- 手の細かい動作が困難になる
- バランスを取るのが難しくなる
- その他の症状:
- 眼球運動障害
- 嚥下障害
ラクナ梗塞の特徴として、脳の深部に発生するため、意識障害を伴うことは稀です5。また、症状が軽度であったり、無症状で経過することもあるため、注意が必要です。
ラクナ梗塞の診断方法
- 神経学的診察:
- 運動機能、感覚機能、脳神経機能の詳細な診察
- 症状の出現時期や進行の様子、病歴、生活習慣の聴取
- 画像検査:
- MRI検査:最も有効な診断方法
- 拡散強調画像:発症早期の診断に有用
- FLAIR画像:比較的最近発症したラクナ梗塞の識別に使用
- T2スター強調画像:微小出血の検出に有効
- CT検査:出血性病変の除外に有用
- MRI検査:最も有効な診断方法
- 血管検査:
- MRA(MR血管造影):脳血管の状態を評価
- 頸動脈エコー:頸動脈の狭窄や動脈硬化の程度を確認
- その他の検査:
- 血液検査:血液凝固能、脂質プロファイル、血糖値などを評価
- 心電図:心原性脳塞栓症の可能性を検討
これらの検査を組み合わせることで、ラクナ梗塞の正確な診断と他の脳卒中との鑑別が可能となります。
ラクナ梗塞の治療法
ラクナ梗塞の治療は、急性期治療と慢性期治療に分けられます26:
急性期治療
- 血栓溶解療法(rt-PA静注療法):
- 発症から4.5時間以内に実施
- 血栓を溶かし、脳血流の早期改善を図る
- 抗凝固療法:
- アルガトロバンなどを使用
- 血栓の進展を防ぎ、急性期の神経症状の増悪を抑制
- 抗血小板療法:
- アスピリンなどの抗血小板薬を使用
- 血小板の凝集を抑制し、再発を予防
慢性期治療
- 抗血小板薬の継続投与:
- 再発予防のため長期的に使用
- 危険因子の管理:
- 降圧薬:血圧管理
- スタチン系薬剤:脂質異常症の治療
- 血糖降下薬:糖尿病の管理
- リハビリテーション:
- 運動機能や言語機能の回復を目指す
- 早期からの開始が重要
ラクナ梗塞の予防法
ラクナ梗塞の予防には、以下のような生活習慣の改善と危険因子の管理が重要です:
- 血圧管理:
- 定期的な血圧測定
- 適切な降圧治療の継続
- 生活習慣の改善:
- 禁煙
- 適度な運動(週150分以上の中強度有酸素運動)
- バランスの良い食事(塩分控えめ、野菜や果物の摂取)
- 適度な飲酒
- 定期的な健康診断:
- 血液検査による脂質プロファイルや血糖値のチェック
- 必要に応じて脳ドックの受診
- ストレス管理:
- 十分な睡眠
- リラックスする時間の確保
- 併存疾患の管理:
- 糖尿病、高脂血症などの適切な治療
ラクナ梗塞の予後と注意点
ラクナ梗塞は、他の脳梗塞と比較して比較的予後が良好とされていますが、以下の点に注意が必要です:
- 再発リスク:
- ラクナ梗塞を一度発症すると、再発のリスクが高まる
- 継続的な治療と生活習慣の改善が重要
- 認知機能への影響:
- 複数のラクナ梗塞が蓄積すると、認知機能低下のリスクが高まる
- 早期からの予防と管理が重要
- 無症候性ラクナ梗塞:
- 症状がなくても、将来的に脳卒中のリスクが高まる可能性がある
- 定期的な検査と危険因子の管理が必要
- 一過性脳虚血発作(TIA)との関連:
- TIAを経験した場合、ラクナ梗塞を含む脳梗塞のリスクが高まる
- TIAの症状があった場合は、速やかに医療機関を受診する
まとめ
ラクナ梗塞は、脳の深部に発生する小さな脳梗塞ですが、その影響は決して小さくありません。高血圧を主とする様々な危険因子が関与しており、適切な予防と管理が重要です。
症状が軽度であったり、無症状で経過することもあるため、定期的な健康診断や脳ドックの受診が早期発見につながります。また、一過性であっても脳虚血症状を経験した場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
ラクナ梗塞の治療では、急性期の適切な対応と慢性期の継続的な管理が求められます。血圧管理を中心とした生活習慣の改善や、必要に応じた薬物療法、そしてリハビリテーションを通じて、症状の改善と再発予防を図ることができます。
脳は私たちの生命と生活の質を支える重要な器官です。ラクナ梗塞を含む脳血管疾患のリスクを理解し、適切な予防策を講じることで、健康的な生活を維持することができます。気になる症状がある場合や、定期的な健康チェックのためにも、躊躇せずに医療機関に相談することをお勧めします。