脳梗塞は、脳の血管が詰まることで起こる深刻な疾患です。日本人の死亡原因の第4位を占める脳血管疾患の中でも、最も多い病態です。本記事では、脳梗塞の原因から最新の治療法まで、詳しく解説していきます。
Contents
脳梗塞とは
脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶え、その結果として脳の神経細胞が死んでしまう病気です。脳の細胞は、いったん血流が止まると数時間以内に完全に死滅し、再生が困難です。そのため、脳梗塞を発症すると重大な後遺症が残ったり、最悪の場合は生命に関わる可能性があります1。
脳梗塞の種類
脳梗塞は、原因や血管の詰まり方によって主に3つのタイプに分類されます7:
- ラクナ梗塞:脳の中の細い血管が詰まる
- アテローム血栓性脳梗塞:頸部や脳表を走る太い血管の動脈硬化が原因
- 心原性脳塞栓症:心臓で形成された血栓が脳血管を塞ぐ
脳梗塞の原因
脳梗塞の主な原因は以下の2つです1:
- 脳血管の動脈硬化(脳血栓症):
- 脳の動脈硬化が進行し、血管内部が狭くなる
- 血流が悪くなった部分に血栓(血の塊)ができ、血流を完全に遮断
- 心臓由来の血栓(脳塞栓症):
- 心房細動などの不整脈により、心臓内に小さな血栓が形成
- 血流に乗って脳血管に運ばれ、血管を塞ぐ
脳梗塞の症状
脳梗塞の主な症状には以下のようなものがあります6:
- 意識障害
- 手足の麻痺(脱力)やしびれ
- 言語障害
- めまい
- 視野障害
- 歩行障害
これらの症状が突然現れた場合、脳梗塞の可能性が高いため、直ちに救急車を呼ぶことが重要です1。
脳梗塞の診断方法
- 頭部CT検査:
- 簡便で短時間で結果が得られる
- 放射線を使用
- 頭部MRI検査:
- より詳細な診断が可能
- 磁場を使用するため時間がかかる
- 脳血管造影検査:
- 詰まっている血管の状態を詳しく調べる
- 心臓超音波検査:
- 心原性脳塞栓症の原因を特定するために実施
- 頸動脈超音波検査:
- 頸部の動脈硬化の状態を確認
これらの検査は主に神経内科や脳神経外科で行われます1。
脳梗塞の治療法
脳梗塞の治療は「時間との戦い」と言われ、発症からの時間経過によって選択できる治療法が大きく変わります3。主な治療法は以下の通りです:
- 超急性期治療(発症から4.5時間以内):
- t-PA静注療法:血栓を溶かす薬を静脈注射
- 血栓回収術(カテーテル治療):カテーテルを用いて血栓を物理的に除去
- 急性期治療:
- 抗血栓薬:血栓の進行や再発を防ぐ
- 脳保護薬:脳細胞の損傷を最小限に抑える
- 抗脳浮腫薬:脳の腫れを抑える
- 回復期・維持期治療:
- リハビリテーション:失われた機能の回復を目指す
- 再発予防:生活習慣の改善や適切な薬物療法
治療の選択には、CTやMRI検査で脳梗塞の進行状況を確認し、脳組織が救済可能かどうかを判断することが重要です6。
脳梗塞の予防法
脳梗塞を予防するためには、以下の点に注意することが大切です1:
- 生活習慣の改善:
- 禁煙
- 適度な運動
- バランスの取れた食事
- 適正体重の維持
- 基礎疾患の管理:
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 心房細動などの不整脈
- 定期的な健康診断:
- 動脈硬化の早期発見
- リスク因子の管理
- ストレス管理:
- 十分な睡眠
- リラックス法の実践
- アルコール摂取の制限:
- 過度な飲酒を避ける
脳梗塞の統計データ
脳梗塞の影響の大きさを示す統計データを以下に示します1:
- 脳血管疾患で治療を受けている総患者数:174万2千人(うち脳梗塞は119万9千人)
- 脳血管疾患の年間医療費:1兆8,051億円
- 脳血管疾患による年間死亡数:10万7,481人(うち脳梗塞は5万9,363人)
- 要介護になる原因の第2位:脳血管疾患(約2割)
これらの数字からも、脳梗塞が日本社会に与える影響の大きさがわかります。
脳梗塞発症時の対応:ACT-FAST
脳梗塞を疑う症状が現れた場合、迅速な対応が重要です。厚生労働省は「ACT-FAST(アクト・ファスト)」という覚えやすい頭文字を用いて、以下の対応を推奨しています5:
- A(Ask):笑顔を見せてもらう(顔の左右対称性を確認)
- C(Check):両手を挙げてもらう(左右差がないか確認)
- T(Talk):簡単な文章を言ってもらう(ろれつが回るか確認)
これらの症状のいずれかが見られたら、すぐに救急車を呼ぶことが大切です。
最新の脳梗塞治療
脳梗塞の治療法は日々進歩しています。最新の治療法としては、以下のようなものがあります8:
- 血管内治療の進歩:
- より高性能な血栓回収デバイスの開発
- 血管内治療の適応時間の延長(従来の6時間から最大24時間まで)
- 再生医療:
- 幹細胞を用いた治療法の研究
- 失われた神経機能の回復を目指す
- ニューロモデュレーション:
- 脳の可塑性を利用した機能回復療法
- 経頭蓋磁気刺激療法(TMS)などの非侵襲的治療法
- 人工知能(AI)の活用:
- 画像診断の精度向上
- 個別化された治療計画の立案
これらの新しい治療法により、脳梗塞患者の予後改善が期待されています。
まとめ
脳梗塞は深刻な疾患ですが、早期発見と適切な治療により、後遺症を最小限に抑えることが可能です。日頃から生活習慣を見直し、リスク因子を管理することが重要です。また、脳梗塞を疑う症状が現れた場合は、迷わず救急車を呼ぶことが大切です。
医療技術の進歩により、脳梗塞の治療法は日々進化しています。しかし、最も効果的な対策は予防です。定期的な健康診断を受け、自身の健康状態を把握しておくことが、脳梗塞予防の第一歩となります。
脳梗塞に関する正しい知識を持ち、適切な予防策を講じることで、健康的な生活を送ることができます。本記事が、脳梗塞についての理解を深め、予防や早期発見に役立つことを願っています。